最高裁判所第一小法廷 昭和32(オ)1180 判決
主 文
原判決を破棄する。
本件を仙台高等裁判所に差し戻す。
理 由
上告代理人弁護士八島喜久夫の上告理由第二点について。
所論の点に関する原判決の認定は趣旨いささか明瞭を欠くが、要するに、本件建
物は架構がもともと堅固であり、また土台の腐朽程度が甚しいとまでは云い得なく
とも、その屋根、たる木、外壁、庇等の損傷の程度が著しく、これらの部分はその
ままでは殆んど使用に耐えなくなつていること、そしてその建築以来約六十年の歳
月を経過し建物全体としての耐用命数もここ数年を出でないというのである。して
みれば本件建物の所有者たる上告人としては保安ないしは衛生の必要から本件建物
をもはや現状のままに放置し得ず、これに根本的な大修理を加うるか、或はこれを
取りこわす為め被上告人らに対し本件解約申入をなすの已むなき事態にあつたもの
というべきであり、このような事態こそ、家屋賃貸借の解約申入について、いわゆ
る正当の事由ある場合に該当するものと解するを相当とする。然るに原判決は他に
首肯するに足る事情を何ら附け加えることなく、ただ漫然と、判示程度の事態を以
つてしては未だ以つて判示解約を正当付ける程の事由とならないとしているのであ
つて、右は法律の適用を誤つたか、或は審理不尽の結果理由不備の誤に陥つたもの
と云うの外なく、論旨は結局理由あるに帰し、原判決は到底破棄を免れないものと
認める。
よつて、爾余の論点に対する判断を省略し民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員
の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫
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裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 入 江 俊 郎
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